目次

概要

一番簡単で、機械的な解法が知られている定数係数線形常微分方程式の中でも、 基礎中の基礎となる2階の斉次常微分方程式

d 2
dt2
u + p
d
dt
u + qu =0

について説明します。

1階の場合

まずは1階の場合、すなわち

d
dt
u + pu =0 の解法について考えてみましょう。

これはいわゆる変数分離形という奴になっていて、

1
u
du =pdt と変形して両辺を積分することで解くことが可能です。 すなわち、積分定数を C として、 logu =pt + C が解です。 よって、 u =exp( pt + C ) なわけですが、 A =eC というように積分定数を置き換えると、 結局、 u = Ae pt と表されます。

2階の場合

1階の場合」で、 u = Ae pt という解が得られたので、それをヒントに2階の場合

d 2
dt2
u + p
d
dt
u + qu =0

を解いてみましょう。

1階の場合の解が指数関数になったので、 2階の場合も同じく指数関数によって解が得られないか試してみましょう。 上述の微分方程式に、 u(t)= Aext を代入してみます。

d 2
dt2
Aext+ p
d
dt
Aext+ qAext= Aext( x2+ px + q )=0

この等式が常に成り立つようにしたければ、 x2+ px + q が 0 ならばいいわけですから、 結局、この代数方程式を解く問題に帰着されます。 この、

d k
dtk
u を xk 置き換えてえられる代数方程式 x2+ px + q =0 を、(微分方程式の)特性方程式といいます。

2次方程式の解は2つありますから、 結局、 特性方程式の2つの解を α, β として、 微分方程式の解は

u = Aeαt+ Beβt

A, B は初期値によって決まる定数) となります。

ちなみに、一般にも、N 階微分方程式の特性方程式は N 次の代数方程式で、 その N 個の解を xi とすると、 微分方程式の解は u =

N
i = 1
Aiexp( xit )。 となります。

虚数解の場合

特性方程式の解が実数の場合には、前節の通り、 微分方程式の解が指数関数の和になります。 では、虚数解の場合にはどうなるのでしょうか。

オイラーの公式: expix =cosx + i sinx を使えば、 虚数解の場合でも前節の方法で解けるんですが、 ここではあえて、オイラーの公式を知らないものとして、 実関数の範囲で解くことを考えます。

まず、簡単な例として、以下の微分方程式を考えてみましょう。

d 2
dt2
u = ω2 u

これの特性方程式の解は ± になります。 三角関数の微分の性質を覚えているなら分かると思いますが、 Asinωt + Bcosωt が解になります。 いわゆる単振動って奴ですね。

で、一般の場合に戻りましょう。

d 2
dt2
u + p
d
dt
u + qu =0

このときどうするかというと、 1階のときの解が u = Aext なので、これと先ほどの結果(三角関数が解になる)を組み合わせて、 u = Aeσtcosωt と置いてみます。すると、

d
dt
u =eσtcosωt eσtsinωt
d 2
dt2
u = A( σ2 ω2 )eσtcosωt 2Aωσeσtsinωt

なので、 これを微分方程式に代入して、

d 2
dt2
u + p
d
dt
u + qu = A( σ2 ω2 ++ q )eσtcosωt A ( 2ωσ +)eσtsinωt

が得られます。 ちなみに、cos の代わりに sin を使って u = Aeσtsinωt とすると、今度は、

d 2
dt2
u + p
d
dt
u + qu = A( σ2 ω2 ++ q )eσtsinωt + A ( 2ωσ +)eσtcosωt

になります。 いずれにしろ、 σ2 ω2 ++ q =0 かつ 2ωσ +=0 になって欲しいわけですが、 実はこの2式、 x = σ + とおいたときの、 x2+ px + q =0 の実部と虚部になっています。 これは見ての通り、微分方程式の特性方程式です。

結局、 特性方程式 x2+ px + q =0 の解 x = σ ± を求めて、その実部・虚部 σ, ω を使って、

u = Aeσtcosωt + Beσtsinωt

A, B は初期値によって決まる定数) が微分方程式の解になります。

オイラーの公式

a が実数のとき、

d
dt
u = au の解は expat でした。 これを複素関数に拡張するとするなら、 α を複素数として、
d
dt
u = αu
の解をもって複素数の指数関数 expαt で定義するのが自然でしょう。

こうして定義した複素指数関数を使って、 「2階の場合」の解き方で 2階微分方程式

d 2
dt2
u + p
d
dt
u + qu =0

の解を求めると、 特性方程式の解を x = σ ± として、

u = A exp( σ +)t + B exp( σ )t

となります。 これと、 「虚数解の場合」の解き方で求めた解

u = Ceσtcosωt + Deσtsinωt

とは、初期値が同じなら一致しているはずです。 (n 階の微分方程式の解は、 任意定数をちょうど n 個だけ含む。 また、初期値が同じなら、全体で解が一致する。) なので、初期値が等しいとしたときの 2組の定数 A, BC, D の関係を求めるために、 u( 0 )

d
dt
u( 0 ) の値を比べてみましょう。 まず、 u( 0 ) とすると、

A + B = C

一方、

d
dt
u( 0 ) とすると、

( σ +)A +( σ )B = σC + ωD

これに対して、 A + B = C であることを使うと、結局、

i ( A B )= D

となります。 これを元の式に代入すると、

A exp( σ +)t + B exp( σ )t = A expσt ( cosωt + isinωt )+ B expσt ( cosωt isinωt )

となりますが、 ここで、 expiωt =cosωt + isinωt とおくなら、 この等式が常に成り立つことが分かります。 この、

expiωt =cosωt + isinωt

という式を、オイラーの公式と呼びます。

余談: オイラーとかガウスは業績が多すぎて、 「オイラー/ガウスの定理/公式」とか言われても、 「どのオイラー/ガウスの定理/公式?」って感じではあるんですが。

余談2: このオイラーの公式は、 指数関数や三角関数のテイラー展開式からも導けます。

重解の場合

証明とかはなしで事実だけ述べますが、 n 階の線形微分方程式の解は、n 個の任意定数を含みます。 (定数の値は初期値などの条件によって決まります。 n 個の定数を決めるには、 n1 階までの微分の初期値を指定したりします。)

では、2階の場合で、重解を持つ場合はどうしましょう。 特性方程式の解を α, β として、 2階の微分方程式の解は u = Aeαt+ Beβt になるわけですが、 重解( α = β )の場合、 u = Aeαt となってしまって、任意定数が1つしか出てきません。

経験的に知られている結果だけ言ってしまうなら、 特性方程式が重解を持つ場合の解は、

u = Aeαt+ B teαt

になります。 実際、微分方程式に teαt を代入すると、ちゃんと 0 になるので、一度計算してみてください。

ここでは経験則に基づく結果だけになってしまいましたが、 「「ラプラス変換」」とか行列による解法について学べば、 もう少し納得の行く過程を知ることができます。

まとめ

特性方程式を使う。

  • 実数解: Aeαt+ B eβt

  • 重解: Aeαt+ B teαt

  • 複素数解: Aeσtcosωt + Beσtsinωt

執筆予定

2階の線形微分方程式になる例を

・速度抵抗付きのバネ
- 粘性のある液体の中にバネを
- ダンパー付きの扉

・RCL 回路
↑の例だと、液体の粘性を自由に制御したりってのは難しいけど、
こっちだと R の抵抗値を自由に変えれるんで、
特性方程式の解によって電圧の波形がどう変わるかを観測しやすくて面白い。

R の値に応じて、
単振動 → 減衰振動 → 過減衰 → 減衰
と変化する様が観測できる。
    

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