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概要

(書きかけ)

「関数の関数」の最小化問題、 すなわち、 関数を与えると値が定まるようなものがあって、 その値を最小にするような関数を求めたい場合があります。

例えば、2点間の最短経路を求める問題があります。 空間上の経路というのは関数で表すことができるわけで、 最短経路を求める問題は、 「経路長という値を最小にするような関数を求める」ということになります。 2点間の経路(曲線)を x(t) で、 経路長(弧長)を L[x] とあらわすなら、 この L は正に、関数 x の関数。

(まあ、まっ平らな空間中では、最短経路は明らかに2点を結ぶ直線です。 でも、曲面上に拘束されてる場合なんかは、複雑な問題になる。 例えば、球面上の場合だったら、2点を結ぶ大円上が最短経路。 )

で、こういう、「実関数 → 実数の関数」を汎関数(functional)と呼び、 汎関数の極値問題を変分問題(variation problem)と呼びます。

変分問題の取り扱い方に関しては、 かなりしっかりとした理論が出来上がっていて、 変分学などと呼ばれたりします。

汎関数

改めて書きますが、 「実関数 → 実数の関数」を汎関数(functional)と呼びます。

「実関数 → 実数」なら何でもよくて、 極端な例でいうと、

δ[x]= x(0)

みたいなのも汎関数です。

まあ、これだとあんまり面白くなくて、 実際よく問題になるのは、 以下のように関数 x(とその導関数 x(n))の定積分で書かれるタイプ。

I[x]=
 b
 
a
f ( x(t), x(1)(t), x(2)(t), )dt

このタイプで、一番簡単な例というと、 重み関数 w(t) との内積。

I[x]=
 b
 
a
w(t) x(t)dt

経路長の問題なんかも、この範疇に入る。

L [x] =
 b
 
a
| x(1)(t)| dt

オイラー・ラグランジュ方程式

端点(x(a), x(b) の値)が固定された定積分形の汎関数

I[x]=
 b
 
a
f ( x(t), x(1)(t), x(2)(t), )dt
x(a)= xa , x(b)= xb

の極値問題(固定端変分問題)を、微分方程式の問題に帰着。

何階までの導関数が含まれてても一般論があるんだけど、 ここでは簡単化のため、 1階導関数まで含むものに限定して考える。

I[x]=
 b
 
a
f ( x(t), x(1)(t))dt

関数の微分に相当するものを考える。

δI[x]= I[x + δx] I[x]
  =
 b
 
a
( f ( x + δx, x(1)+ δx(1)) f ( x, x(1)))dt

これを変分(variation)と呼ぶ。

で、積分の中身をテイラー展開して、1次の項まで取ると、

δI[x]=
 b
 
a
(
∂x
f(x, x(1)) δx +
x(1)
f(x, x(1)) δx(1))dt

2項目(x(1)に関する項)を部分積分して、

δI[x]=
 b
 
a
(
∂x
f(x, x(1))
d
dt
x(1)
f(x, x(1))) δx dt +[ f(x, x(1)) δx ]
b
 
a

端点固定の問題なので、 δx(a)= δx(b)=0 で、

δI[x]=
 b
 
a
(
∂x
f(x, x(1))
d
dt
x(1)
f(x, x(1))) δx dt

「実関数の極値 = 微分が 0」だったのに対して、 「汎関数の極値 = 変分が 0」。 これが任意の δx に対してなりたつには、

∂x
f(x, x(1))
d
dt
x(1)
f(x, x(1))=0

すなわち、 固定端の汎関数 I[x]=

 b
 
a
f ( x(t), x(1)(t), x(2)(t), )dt の極値問題(変分問題)と、 微分方程式
∂x
f
d
dt
x(1)
f =0
は同値。 これを、(変分問題に対する)オイラー・ラグランジュ方程式という。

変分問題の例

例: 2点間の最短経路

例えば、球面上に拘束されてる場合の最短経路問題を解いてみる。

もう1つ、有名な例として、最速降下曲線 (brachistochrone curve)

弧長とエネルギー

曲線 x(t) の弧長は L[x]=

 b
 
a
| x(1)(t)|dt 例えば、ユークリッド空間上の曲線 x(t)=( x1(t), x2(t), x3(t)) の場合だと、 (表示の都合上、時間微分を ' で表すと)

L [x] =
 b
 
a
x1'2+ x2'2+ x3'2 dt

これに対して、以下のようなものを定義。

E [x] =
 b
 
a
( x1'2+ x2'2+ x3'2) dt

力学で、運動エネルギーが

1
2
mv2 になることの類推から、 この E をエネルギーと呼んだりする。

平方根がうっとうしいし、 弧長 L の最小化問題をエネルギー E の最小化問題にできないか考えてみる。

L E の関係

以後、簡単化のために、 平方根の中身を V と書いて、 L[x]=

 b
 
a
Vdt , E[x]=
 b
 
a
V dt
としておく。

いったん L=

 b
 
a
Vdt , α

E
b a

と置いて、 積分

 b
 
a
(V α )2dt
を考えることで、

 b
 
a
( V α ) 2 dt =
 b
 
a
V dt 2α
 b
 
a
Vdt α2
 b
 
a
dt =E α2(b a)=E
L2
b a

一番左の辺が、二乗の積分(= 常に正)なので、 E

L2
b a
。 等号は、V α、 ようするに、 V が積分変数 t によらず一定のとき成立。

弧長パラメータ

時間パラメータ t を適当に変数変換して、 Vdt =V

dt
ds
ds としたとき、 V
dt
ds
が定数になれば、 前節の結果から、 この変数 s を使う限り、 E=
L2
b a

V

dt
ds
が定数ということで、 その値を 1 にしておくと、
ds
dt
=V
で、結局、

s(t)=
 t
 
a
Vdt

これを、 V の弧長パラメータと呼ぶ。

V の座標変換不変性

V =

dx1
dt
2+
dx2
dt
2+
dx3
dt
2 なので、

V dt =
dx1
dt
2+
dx2
dt
2+
dx3
dt
2
dt =
dx1
dt
2+
dx2
dt
2+
dx3
dt
2
dt
ds
ds
  =(
dt
ds
dx1
dt
)2+(
dt
ds
dx2
dt
)2+(
dt
ds
dx3
dt
)2
ds =
dx1
ds
2+
dx2
ds
2+
dx3
ds
2
ds

パラメータ変数を何に取ろうが形が一緒。 もちろん、弧長パラメータを使っても一緒。 → E=

L2
b a

結局、 弧長 L の最小化問題とエネルギー E の最小化問題は同値。

まとめ

汎関数 = 実関数→実数 の写像

変分問題 = 汎関数の極値問題

変分問題の取り扱い方に関しては、 かなりしっかりとした理論が出来上がってる → 変分学。

結局、変分問題は微分方程式に帰着させられる。

弧長の変分問題とエネルギーの変分問題は同値。

further reading

「変分問題は微分方程式に帰着させて解くことができる」といっても、 微分方程式を解析的に解くのはそれはそれで難問。 というか、解けない場合の方が多い。

微分方程式は、結局、数値計算で近時解を求めたりするけども、 数値計算するなら、変分問題の方が解きやすかったりすることもある。 なので、むしろ、 逆に微分方程式を変分問題に直して数値計算したりもする。

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