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チェビシェフ有理関数

ヤコビの楕円関数cd(x, k) を用いて、 以下のように定義される関数をチェビシェフ有理関数(elliptic rational function)という。

Rn, k1(x)cd(
n K1
K
cd-1( x, k ) , k1)
k1' = 1 - k12
K1 = K(k1),   K1' = K(k1')
K = K(k),   K' = K(k')

k は、

K K1'
K1 K'
= n を満たすように選ぶ(k' = 1 - k2)。 ただし、K(k) は第1種完全楕円積分である。

  • チェビシェフ多項式を有理式に拡張したようなもの。

  • k1→0のとき、「チェビシェフ多項式」に。

  • 区間[0, 1]|Rn, k1(x)| < 1

  • 区間[1, 1/k1]で単調増加

  • 区間[1/k1, ∞]|Rn, k1(x)| > 1/k1

数値計算上、k k = q-1( exp (

π K1
n K1'

)) で求める。 (q(k) は Jacobi のテータ関数のノーム。)

執筆予定

ヤコビの楕円関数の詳細は 「ヤコビの楕円関数」 参照。

関数のグラフ。
↑の導出の過程。
零点と極 → 有理式で表す。

メモ

基本概念

複素平面状に以下のような経路 C = C1 + C2 + C3 を考える。

  • まず、実軸上をK0と進む(C1)。

  • 次に、虚軸上を0i K'と進む(C2)。

  • 最後に、Im(u) = i K'上をi K'K + i K'と進む(C3)。

経路 C 上での cd(u, k) の値の変化の仕方を表1に、値を3次元的にグラフ化したものを図1に示す。 図1中では、 経路 C をオレンジ色、 C1 上での値を赤色、 C2 上での値を青色、 C3 上での値を緑色の線で表す。

cn(u, k)の値の変化の仕方
経路 式変形 値の変化の仕方
C1K0 cd(K - u, k)sn(u, k) 01の間で単調増加。
C20i K' cd(i u, k)
1
dn(u, k')
1
1
k
の間で単調増加。
C3i K'K + i K' cd(u + i K', k)
1
k cd(u, k)
1
k
の間で単調増加。

cn(u, k) の C 上での値
cn(u, k) の C 上での値

cd(u, k)C 上で単調増加 → cd の逆関数 cd-1(x, k) の実軸上での値は経路 C に。

次に、経路 C に定数

n K1
K
を掛けた経路 D = D1 + D2 + D3 を考える。

  • D1

    n K1
    K
    C1… 実軸上をn K10と進む。

  • D2

    n K1
    K
    C2… 実軸上を0i K1'と進む。 (
    n K1 K'
    K
    = K1'

  • D3

    n K1
    K
    C3Im(u) = i K1'上をi K1'n K1 + i K1'と進む。

この経路 D 上での cd(u, k1) の値を3次元的にグラフ化したものを図2に示す。 図2中では、 経路 C を紫色、 C1 上での値を赤色、 C2 上での値を青色、 C3 上での値を緑色の線で表す。

cn(u, k1) の D 上での値
cn(u, k1) の D 上での値

「 実軸 [0, ∞] → (cd-1(x, k))→ 経路 C → (

n K1
K
を掛ける)→ 経路 D → (cd(u, k1))→ Rn, k1(x)」 となるので、チェビシェフ有理関数 Rn, k1(x) のグラフは図3のようになる。

チェビシェフ有理関数のグラフ
チェビシェフ有理関数のグラフ

零点/極

Rn, k1(x)n 個の零点と極で表される有理式となる。 まず、Rn, k1(x) の零点/極を求める。 cd(u, k) の零点は

u = (2m + 1)K(k)

なので、 Rn, k1(x) の零点は、

n K1
K
cd-1( x, k )(2m + 1)K1

したがって、

x = cd(
2m + 1
n
K, k )sn(
n - 2m - 1
n
K, k )
同様に、cd(u, k) の極は

u = (2m + 1)K(k) + i K(k')

なので、 Rn, k1(x) の極は、

n K1
K
cd-1( x, k )(2m + 1)K1 + i K1'

したがって、

x = cd(
2m + 1
n
K + i K', k )

1
k sn(
n - 2m - 1
n
K, k )

ωm, nsn(
n - 2m - 1
n
K, k )
と置くと、 sn の性質から、 ωm, n = -ωn - m - 1, n となる。 Rn, k1(x)は、

Rn, k1(x) = x
(n - 1) / 2
m = 0
k2 ωm, n2 - 1
1 - ωm, n2
x2 - ωm, n2
k2 ωm, n2 x2 - 1
   … n が奇数のとき
Rn, k1(x)
n / 2
m = 0
k2 ωm, n2 - 1
1 - ωm, n2
x2 - ωm, n2
k2 ωm, n2 x2 - 1
   … n が偶数のとき

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