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概要

PowerShell の話の前に、 スクリプト言語の話を少し。

スクリプト言語とは、 小規模なコード向けに、 (小規模かつ性能をあまり重視しないうちは)便利な機能を盛り込んだプログラミング言語です。

スクリプト言語の目的は様々ですが、 例えば、 文字列処理に長けた物もあれば、 HTML と組み合わせてリッチでインタラクティブなウェブページを作るための言語などもあります。 また、多くのシェル環境は、 バッチ処理(まとめて一括処理)などのための専用のスクリプト言語を持っています (PowerShell は、このシェル用のスクリプト言語)。

スクリプト言語と、C# などのアプリケーション開発用の言語(スクリプト言語との対比でシステムプログラミング言語と呼んだりもするみたい)とは、 前提・目的の違いによって、 言語の特性が変わってきます。

スクリプト言語に対する前提・要求と特性

小規模・性能度外視のコードを前提としたスクリプト言語と、 時には大規模なアプリケーション開発にも使われる非スクリプト言語では、 前提の違いから、言語に求められる要求が変わってきます。 要求が異なれば、当然、言語の特性も変わってきます。

スクリプト言語と非スクリプト言語の比較
スクリプト言語 非スクリプト言語
前提 小規模 大規模
概ね、1人で チーム開発
性能はあまり要求されない 高い性能が要求される
言語への要求 覚えにくくても、1度覚えてしまえば便利 言語自体はシンプルに
書きやすく 書きやすさ以上に、読みやすさ・チェックしやすさ優先
性能すらも度外視で書きやすく 性能に影響がない範囲で書きやすく
言語の特性 動的型付け 静的型付け
インタープリット方式 コンパイル方式
便利そうな文法はなんでも取り入れる トリッキーすぎるコードが書けてしまう文法は避ける

まあ、本当は細かい目的・用途ごとにプログラミング言語があったっていいんですが、 実際には、表1の右側の非スクリプト言語は C 言語とその系譜である C++, Java, C# の独壇場です。 「読みやすさ優先」とか「トリッキーな文法は避ける」とかの制約が付くと、 誰が作ろうと大体似たような言語になっちゃうのかも。

一方で、左側のスクリプト言語は結構な種類のものが残っていたりします。

具体例

私的には、 スクリプト言語と非スクリプト言語の違いで、一番大きいのは 「書きやすさ優先」と「読みやすさ優先」かなぁと感じています。

具体的な説明のために、 以下のような C# コードを考えてみます。

Dictionary<string, int> dic = new Dictionary<string, int>();
dic.Add("test", 1);
Console.Write(dic["test"]);

まあ、多分、C# というプログラミング言語をしらなくても、 dictionary(辞書)という単語を知っている人なら大体このコードの意味が分かるんじゃないでしょうか。 キー(test)と値(1)のペアを管理する辞書があって、 辞書に (test, 1) というペアを追加して、 最後に test をキーとする値を参照。

で、これと似たようなことを PowerShell のスクリプトを使って書いてみると、以下のようになります。

$dic = @{}
$dic.test = 1
$dic.test

これだけです。ほんとに。 これを見れば、 「書きやすさ優先」と「読みやすさ優先」の違いがなんとなく分かるんじゃないかと。 むちゃくちゃ書きやすいんですが、 PowerShell を知らない人からしたらほんとに意味の分からないコードだと思います。

C# の側が Dictionary という名前のクラスで辞書を作るのに対して、 PowerShell では @{} だけで辞書が作れてしまいます。 (正確に言うと、@{} で作られるのは System.Collections.Hashtable 型だけど。)

値の参照も、 C# では dic["test"] というように、 いかにも test というキーで値を取り出しているように見える書き方なのに対して、 PowerShell ではプロパティの参照と区別の付かない $dic.test という書き方をします。

ちなみに、PowerShell では $dic["test"] という書き方もできます。 このように、「同じものに対して複数の異なる書き方ができる」というのは、 「便利な文法は何でも取り入れる」スクリプト言語によくある特徴ですね。 非スクリプト言語の場合、「dic["test"] と書けばいいんだから dic.test と書ける必要はない、むしろそれをやると混乱の原因」と考えるのが普通です。

混乱の原因というのは、 例えば C# では、dic.test と書くと、 test はメンバー変数かプロパティのどちらかなわけです。 これに対して、PowerShell では、 test はオブジェクトのメンバー変数かもしれないし、 連想配列のキーかもしれないし、 XML の子要素かもしれない。 全然違うものを同じ文法で書けるというのも、 「書きやすさ優先」の結果です。

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