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背景: 釣り記事ごめんなさい

はてなにこんな記事を書いたりしました。

露骨に釣り記事です。 そしてネタバレ。

ここでの目的は2つあります:

  1. こんな露骨な釣り記事を書いてまで伝えたかったことを改めて書く。 (記事が散在しちゃったので、1か所にまとめる。)

  2. 挑発的な文体のまま各所にリンクを張られるのが忍びないので、まともな文章に書きなおす。

とりあえず見てみて

つくづく思うわけですが、 「好きの反対は、嫌いじゃなくて無関心」って言葉はほんとにその通り。 「Word はダメだ」って思ってる人の大半はそもそも Word をほとんど触っていない様子。

  • 「Word はこれができないからダメだ!」 → 「普通にその機能ありますよ?」

  • 「Word 97 で確かめたんだけど・・・」 → 「97 と 2007 の間の10年間の進歩が記事のテーマです」

などというやり取りもあったり。

ただ、「見てもらえない・気づいてもらえない」と「機能がない」はほぼ同じことですからね。 普及させたい側も、まず見てもらう努力が必要です。

そこで、比較的 TeX 利用者も多いと思われるはてなで、露骨な釣り記事を書くという手段に出たわけですが・・・。 あと、動画での説明はやっぱり強いですね。 30秒~1分程度の動画 + 説明文っていう構成はなかなか成功だったようです。

ほんとに使うの?

「大学の卒論は TeX で書いたけど、就職してから一度たりとも TeX 触ったことがない」って人が多いんですよねぇ。 僕の周りの話なので、主に情報系の話になりますが。 知ってる範囲で家電・自動車・SI・ウェブ・ゲームなど、どこに聞いても Word(もしくは OpenOffice や iWork)。

一生涯 TeX を使うような人が卒論で TeX を仕込まれるってのはいいことだと思うんですけどね。 TeX なんて使いもしない系統の学科でまでなんで TeX を仕込まれるんでしょう。 最近は大分そんなところも減ったと思っていたんですけども。

特に、情報系だとプレゼンはほとんど PowerPoint なんですよね。 あと、Excel の表計算はよく使われます。 なので、研究室全員分の Office ライセンスはたいていどこも買っていたり。 もちろん、Word もセットです。 なのに Word だけ使われない。

その結果はというと、企業ではなんでもかんでも PowerPoint と Excel で書いちゃう人が続出。 Word には章立てのアウトラインとか、図表番号の参照とか、便利な機能が入ってるんですけどもねぇ。 方眼紙にできることの方が大事らしいです。

10年の月日

今回書いた釣り記事の1つのテーマに「10年前の最良は今でも最良ですか?」というのがあります。 釣り記事中で書いたセリフの中でも、以下の文章は我ながら気に入っています。

そりゃ、「Word 95 で書け」と言われたら僕だってお断りだ。だが、今はもう2010年なんだ。Microsoft のドル箱商品は確実に進歩を続けている。

僕は、8・9年前から HTML だけで数式を書いたりっていう邪悪な黒魔術を使ってる身なんで、 実際のところ、 テキストだけで文書を書く TeX を非難するようなキャラじゃなかったりします。 (参考: 「勉強用ページの XSL」。)

ただ、それはあくまで「8・9年前だったからしょうがなくやった妥協」であって、今なら多分やらなかったでしょうねぇ・・・。 (黒魔術的な手法はあくまで最終手段にしたいです。)

LaTeXの代わりとしてHTMLに期待、そんな風に考えていた時期が僕にもありました(遠い目)。 SVG や MathML や XSL-FO が未来だったあの頃を思い出します・・・。

本当に、8・9年の技術の進歩は素晴らしいです。

ちょっと昔話

昔は Unicode に数学記号なんてなかったわけですよ。 不足も多かったですし(拡充されたのは Unicode 4.0 から)、 コード的に入っていても、フォントが対応していませんでしたし。 例えば、「数学」を書いていた頃なんかでいうと、 ℵ(アレフ、無限集合の濃度を表す記号)を出すだけでも一苦労。

  • 最初は|ω|とか書いてごまかしてた気が。

  • あるとき、多言語フォントを使えば(Unicode で文章を保存すると、多言語フォントで表示される)、ヘブライ文字の ℵ が表示できることに気付く。

    • けど、ヘブライ語って右から左に文字を書く言語なので、ヘブライ文字の ℵ を書いちゃうと文字の表示が全部右から左に表示されたり。
  • 後々、ヘブライ文字の ℵ(U+05D0)とは別に、数学記号としての ℵ(U+2135)があることに気付く。

今やどうなっているかというと、ℵ 記号は普通に表示できますし、 MS-IME を使って変換で出すことすらできます(追加の辞書不要、標準で)。

数式エディターも、昔はあまりいいものがなかったですし。 Word 上で、キーボードだけでこれだけ快適に数式が入力できる日がくるなんて夢にも思いませんでした。 (Word 2007 で数式エディターが非常に使いやすくなったって話は別ページにて説明します。) しかも、かねてからずっと僕が思っていた「Unicode に文字入ってるのに使わない手はない」ってのを地で行くエディター。 Windows 7 では、数式入力パネルなんてものが標準で付属していて、 数式の手書き入力までできます。

また、うちのサイトでは XML 使って数式を書いてるわけですけど、昔は XML の入力補助アプリもイマイチでした。 Visual Studio 2008 で、XSD を書いておけば自作スキーマのタグ補完ができるって気付いたときは割と感動モノでした。 (多分、VS 2005 からの機能。)

今はまあ、数式エディターの使い勝手は別途説明するとおりですし、 TeX で出せるような文字は一通り全部 Unicode に入ってるっぽいですし、ほんとにいい時代になったもんです。

というのような悪あがきを色々してきた身としていうわけですよ、「10年前の最良は今でも最良ですか?」って。 「やっとこの時代がやってきた!」って歓喜している横で、 「10年前基準」の議論で盛り上がってる人を見るのは切ない気持ちでいっぱいです。

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