高校で数学を習う方々にいくつか言葉を送ろうかと思います。
いきなりですが、 ドラゴンボール的な言い方で高校数学の立場を言い表すと以下のような感じです。
数学は歴史を追うごとに深みがはるかに増す。 そして高校で習う数学の後には300年近い歴史を残している。 この意味がわかるかな?
そう、高校数学は17~18世紀ごろの数学なんですよ。 ガリレオやデカルトの頃に始まって、 ニュートン、 オイラーと経て、 ガウスの時代頃まで。 コーシーとかハミルトンの名前が出てくるか出てこないかってくらいです。
はっきり言うと、そんなに高度な内容じゃありません。 現代の教育の質の高さを考えると、 概要をつかむくらいなら1・2ヶ月もあれば十分な内容です。 それを3年もかけてじっくりとやるのは、ただひとえに、 「まるで日本語をしゃべるかのごとく、ごく自然に扱えるようになるまで体に刻み込め」 ということです。 高度ではないとはいえ、基礎中の基礎なので、しっかりと固める必要があります。
数学ってのは、科学の共通基盤であり、科学者の共通言語みたいなもんです。 数学というある種の言語を流暢にしゃべれるようになれば、確実に世界が広がります。
本当にもう何の誇張もなく、それくらい数学ができると、 理系な思考力が問われる分野のものは何でもできます。
ちなみに、少々余談になりますが、 大学に入ると、 生物学科では化学の知識が、 化学科では物理が、 物理学科では数学が必須だなんて言われていて、最終的には数学が待っています。 なので、物理ができないから化学科に、 化学もできないから生物学科に行きたいなんてことは考えない方がいいですよ。 それで泣きを見る人が結構いるようです。
余談ついでに、生物学 → 化学 → 物理学 → 数学 に至る過程を少し説明。
今、生物学ではたんぱく質の構造解析とかすることが多いわけです。 生物を構築する物質の中で、もっとも多様で多機能なものですから。 生命の謎を解き明かすのとか、 病気の治療に生かされたりします。 で、たんぱく質の構造解析なんて、もうもろに分子化学なわけですね。 たんぱく質中にどういう原子が含まれてて、どういう順で並んでて、 どういう立体構造を持っているかを調べる。
で、今度は化学ですけど、 分子中に原子がどう並んでいるか、その原理を理解するためには、 量子力学の知識が必要になります。 物質は「エネルギーのもっとも低い状態になりたがる」、言い換えると、「安定な状態を好む」わけですが、 分子・原子を構築する物質である原子核とか電子も当然安定な状態を好みます。 原子が金属結合したり、分子結合したりするのも、この「安定な状態を好む」という原理から説明が可能で、 これを理解するためには原子核・電子レベルの物理学である量子力学が必要になります。
ということで、今度は物理学です。 物理学(に限らず科学)の基本は、仮説立てと実験による実証ではあるんですが、 仮説というのは(物理学では特に)数学という道具を用いて記述されます。 「物体はこの微分方程式の解に沿って運動する」とか、そういう仮説を立てて、 これの立証実験をするわけです。 特に量子力学なんて、 演算子の固有関数展開とか経路積分とか、 高度な数学が出てくるんで、数学が苦手だと話になりません。
学問はよく登山に例えられることがあります。 下から上を見上げてもよく見えないけども、 上から下を見下ろすとすごく見ばらしがいい。
これは本当にその通りで、 あまりよく分からない所があったとき、 分からない所は置いておいて、一度先に進んでみてください。 そして、しばらく進んでから分からなかった所を見返してみると、 意外に分かるようになっているはずです。
しっかり分かるようになるまで次の節に進まないっというのは、 結構効率の悪い学習方法なのであまり推奨しません。 むしろ、もういっそのこと、 教科書を貰ったら、理解できるかどうかは別にして、 とりあえずその日のうちに全部読んでしまうくらいがちょうどいいです。
分からない所があったとき、とりあえず先に進んでしまうのに加えて、 他の分野に目を移してみることも有効な場合があります。 というのも、一見全然違う2つの事柄に、思わぬ所で関連性があることがあるからです。
関連性のある項目と言うのは覚えやすく、 1つ1つばらばらに覚えるよりも、 手広くいろいろなことを覚える方が記憶力はよくなります。
「数学は覚えることが多い」と思っている人は、 何か学習方法を間違えているか、素養のない人だと思います。
丸暗記は必要最小限にとどめる。 最小限の公式と、導出ルールだけを覚える。 もちろん、細々とした公式も覚えてると楽できる物はありますが、 そんなものは意図して覚えなくても、 何度か導出しているうちに重要な物だけちゃんと身につくから大丈夫です。
少し厳しい言い方をすると、学校で習うことはできて当然です。 学校で習うこと以外の知識がない場合、 よっぽど優秀でもない限りそれほど注目は受けません。
注目に値する人材というのはその1段階上を知る人間です。 これには主に2つの理由があるのですが、 1つは、別項でも言いましたが、 学問というものは1段階上に進んでから下を見下ろすとより深い理解が得られるためです。 そしてもう1つは、 1段階上を知るということが、 受動的に教えられたことだけ覚えるのではなく、 能動的に知識を身につけようとする姿勢の現れだからです。